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所定労働時間と所定外労働時間(残業)

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所定労働時間と所定外労働時間(残業)

 

基本給に残業代が組み込まれている

「当社の基本給には残業代は含まれています」

社員には、基本給に残業代が含まれているということを口頭で説明し、納得してもらった上で入社してもらいました。

しかし、後になってから社員に「残業代が支払われないのは違法だ。だいたい何時間分の残業が含まれているのか分からないじゃないですか」と咎められたそうです。

中小企業では基本給と残業代の総額を含め、「基本給」として支給するケースがよくあります。

しかし、残業手当の額および残業の設定時間を提示していない場合、基本給に残業手当を組み込むことは無効となる可能性が非常に高くなります。

その結果、最悪の場合、未払残業代の請求をされる可能性があるので注意が必要です。

また、口頭による雇用契約は残業代に限らずトラブルの元となります。

雇用契約は必ず書面で締結しましょう。

 

固定残業代制度って何?

通常、会社は従業員の労働時間を把握し、しっかりと計算して、残業が発生していれば、残業代を支払わなければなりません。

しかし、あらかじめ毎月の残業代額を定めておき固定残業代として支払う制度があります。

固定残業代制度は、給与計算の簡素化を目的とする仕組みとして、あるいは、基本給に定額残業手当を加えることで、時間外労働割増賃金の単価を抑えつつ、社員に一定額の賃金を支払うことのできる仕組として活用されています。

 

2種類の固定残業代の支払方法

固定残業代の支払い方法には大きく分けて、

「定額残業手当方式」と「基本給組込方式」があります。

 

① 定額残業手当方式(時間数支払い型)

基本給とは別に、固定残業手当として支給する方法です。

この方法が一番シンプルで社員にとってもわかりやすい制度であると言えます。

例えば、

月に30時間の残業代を想定する場合、固定残業の金額の定め方としては

「基本給+固定残業手当○○円(時間外労働20時間相当分)とします。

総支給額の金額を設定してから、20時間相当分の固定残業手当を算出する場合は以下の計算式で行います。

 

固定残業手当計算方法

例)

Step1  総支給÷(168時間(1ヶ月の所定労働時間)+20時間×1.25=時給換算単価

Step2 時給換算単価×1.25=残業単価

Step3 残業単価×20時間=固定残業手当

 

② 定額残業手当方式(一律支払型)

「定額残業手当30,000円」と一律の金額で支払う方法があります。

この場合、社員個々によって時給単価が異なり、見込みの時間外労働時間数が異なってくるのが運用上の問題です。

時給単価の高い社員は時間外の労働時間は少なくなります。

公平に扱う場合は段階の手当を定める必要があります。

後々のトラブルの可能性を考えると、実務的には、前述の時間数支払い型で運用する方が有用です。

 

③基本給組込方式

基本給の中に残業代を組み込む方法です。

基本給に残業代が含まれているため、固定残業代分が不明確となる可能性があります。

この方式を採用する場合は、あらかじめ基本給の残業代部分を、就業規則や雇用契約書等で社員に明確に提示するとともに、どの部分が割増賃金に相当する部分なのか明確に区分する必要があります。

基本給組み込み形式は社員にとっては非常にわかりにくい制度のため、慎重な運用が必要です。

 

個別の同意と就業規則への記載

賃金トラブルを起こさないためにも、社員との個別の同意を忘れないようにしてください。

同意を取る方法として、固定残業手当の内訳を明示した確認書を作成します。

固定残業手当の内訳等は賃金の変更により変動しますので、変更の都度対応をとるようにしましょう。

「就業規則には記載していませんが、社員に○○手当は残業代として支払っていました」と会社がいくら主張しても、就業規則や雇用契約書に記載されていない場合は無効とされる可能性が高くなります。

社員への同意と合わせて、就業規則や雇用契約書の整備も行いましょう。

定額残業制を導入する場合は社員に周知徹底しましょう

 

定額残業手当を下回る場合、超えた場合はどうする

固定残業手当を超えて残業を行った場合には、超えた時間の残業代を支払う必要があります。

超えた時間分を支払うことを就業規則及び雇用契約書に記載しましょう。

一方、固定残業手当を下回る場合に控除していいのかという問題がありますが、固定残業手当は保障給的な性格のため控除することはできません。

下回る場合に控除するのであれば、最初から固定残業制を導入せずに、普通に支払う方が良いでしょう。

 

定額残業手当の時間差は何時間でも良いのか?

会社によっては人件費を抑えるために固定残業手当の時間数を多く設定するケースがあります。

過度な時間外労働をあらかじめ設定することは、社員の健康を配慮せず、長時間労働を誘発する可能性が高くなります。

判例によると、月80時間分の固定残業手当の設定に対し、安全配慮義務違反が認められ、会社・役員に対し損害賠償が出ています。

そのため労働時間について、社員の健康に配慮した時間設定が必要であり、月45時間以内が妥当と考えられます。

定額残業手当の時間数は45時間以内の設定をしましょう

 

固定残業制度を導入する場合の注意点

基本給にすべての時間外手当を含んで支払っている会社が、労働基準監督署の指導で、これまで支払っていた基本給を、基本給と固定残業手当に分けて支払うように指導される場合が多くあります。

固定残業制度の間違った解釈や中途半端な運用により、制度の真価を発揮できないことがあります。

適正に運用しなければ、以下のようなリスクを伴います。

注意ポイント

1 時間外労働割増賃金を支払っていないことになる

2 時間外労働割増賃金の単価が高くなる

3 残業代未払い状態となり裁判を経て賦課金制裁を請求される

過去の判例を踏まえて固定残業制度を適正に運用するためには、以下の項目を必ず実施するようにしてください。

ポイント

1 就業規則等に固定残業手当の制度を明確に規定する

2 雇用契約書等に固定残業手当の金額および対象となる時間数を記載し、了承した旨の社員の署名を求める

3 賃金台帳に固定残業手当の対象となる時間を明記する

4 固定残業手当の対象となる時間を超えて残業した時には、超過した残業時間に対応した時間外労働割増賃金を支払う

 

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